またトランプが何か言っている ── キューバ発言を入り口に
2026年5月20日、トランプ大統領はキューバ独立記念日に合わせて声明を発表し、「米国はキューバの共産政権を容認しない」と強調しました。5月1日にはフロリダの演説で「キューバをほぼ即座に乗っ取る」とも発言しており、グリーンランド、パナマ運河に続く「地政学ディール」路線がまた動き出した格好です。
スマホでニュースを開くたびに、こんな見出しが飛び込んでくる。「またか…」とため息をつきながら、自分の証券口座を開いてみる。日経平均は前日比マイナス。「売った方がいいのかな」「積立、一旦止めようかな」── そう思った方、少なくないのではないでしょうか。
この記事では、2025年以降のトランプ発言と株価の動きを日本株・米国株の両面から振り返りながら、「本当に気にすべき発言」と「スルーしていい発言」の見分け方、そして振り回されるたびに発生している見えないコストについて、一緒に考えてみたいと思います。
トランプ発言と株価の年表 ── あの急落、あの急騰

トランプ政権2期目が本格化した2025年以降、株式市場に特に大きな影響を与えた出来事を振り返ってみましょう。
2025年4月「相互関税ショック」
2025年4月2日、トランプ大統領が各国への相互関税を発表。日本は24%という数字を通告され、日経平均は数日で数千円規模の急落を演じました。「これは本当にやばい」と感じた方も多かったはずです。
ところが、4月9日。「90日間の猶予」が発表されると、今度は一転して日経平均が急騰。一日で+7%を超える上昇日も現れました。関税ショックで売りを入れた人は、この急騰を指をくわえて見るしかありませんでした。
その後の日米交渉と着地点
結局、日本への相互関税は交渉を経て15%に落ち着きました。最初に提示された24%から大幅に下がった形です。ただし製造業の生産計画は、この間の不透明感を受けて約2%下方修正されており、実体経済への影響はじわじわ続いています。
2026年2月「中東ショック」
2026年2月下旬には中東情勢の緊迫化を受けた「中東ショック」が発生。トランプ政権発足からわずか1年余りの間に、複数回の「ショック」が押し寄せてきた計算になります。SBI証券のレポートが「株価ショックの常態化」と表現したように、もはや急落は例外的な出来事ではなくなっています。
2026年5月 ── 現在地
直近5月15日時点の日経平均は61,409円。長期金利の上昇と中東情勢を背景に2週ぶりに反落しています。キューバ発言が飛び出したのは、まさにこの不安定な局面です。年末の市場予想(メインシナリオ63,000円)には届く余地があるとされていますが、その道のりは決して一本道ではないでしょう。
なぜ日本株はとくに揺れやすいのか

米国発のニュースなのに、なぜ日本株の方が激しく動く場面があるのか。不思議に感じたことはないでしょうか。これにはいくつかの構造的な理由があります。
輸出企業への依存度
日経平均に含まれる企業の多くは、製造業や輸出関連企業です。トヨタ、ソニー、キヤノン……いずれも売上の大きな部分を海外に依存しています。関税が上がれば輸出競争力が落ち、円高が進めば円換算の利益が目減りする。トランプの一言が、日本企業の収益モデルを直撃する構造になっているのです。
外国人投資家が「売り手」になりやすい
日本株の約30%は外国人投資家が保有しています。世界規模でリスクオフ(安全資産への逃避)の動きが起きると、まず日本株が売られる傾向があります。「流動性が高く、換金しやすい市場」として真っ先に処理される側に回るのです。日本の個人投資家が「何もしていないのに下がっている」と感じるとき、その裏では外国人投資家が機械的に売りを入れていることが少なくありません。
円の存在
リスクオフが進むと、円は「安全通貨」として買われ、円高になりやすい。円高は輸出企業の収益をさらに圧迫します。「株安 + 円高」のダブルパンチが日本株を特に大きく動かす要因です。
米国株との違い ── S&P500が比較的「戻りやすい」理由

一方の米国株はどうでしょうか。S&P500は2026年4月20日時点でYTD(年初来)+4.23%。トランプ大統領当選後からの累計リターンは約+30%に達しており、乱高下を繰り返しながらも総じて上昇基調を維持しています。
内需主導企業が多い
S&P500を構成するGAFAMなどの巨大テック企業は、米国内の消費や広告収入を主な収益源としています。「関税」の直接的な影響を受けにくい業種が多く、トランプ発言に対する耐性が日本株より高い面があります。
AIブームと金融緩和期待
半導体・AI関連への投資拡大期待が米国株の底上げ要因になっています。また、FRBの金融政策への思惑が市場の下支えになる場面も多い。「トランプが利上げに圧力をかける → FRBが緩和的になるのでは」という期待が株価に反映される構図です。
ただし、米国株も「無風」というわけではありません。関税の影響を受けやすいテクノロジー・自動車・消費財セクターは、発言のたびに激しく動いています。「米国株 = 安全」という単純な図式は、少し注意が必要です。
「ノイズ」と「シグナル」の見分け方
米国パーソナルファイナンスの世界には、「ノイズ(雑音)とシグナル(本物の情報)を分けよ」という考え方があります。これが、トランプ発言を読み解くうえで非常に役立つフレームです。
ノイズになりやすい発言
グリーンランド購入、パナマ運河奪還、そして今回のキューバ乗っ取り発言。これらは地政学的なアドバルーン(観測気球)や外交的プレッシャーとして機能することが多く、実際に政策として動く可能性は現時点では低いと見られています。市場も初期反応こそ荒れますが、数日で落ち着くパターンが繰り返されています。
シグナルになりやすい出来事
一方、実際の関税率の確定、FRB議長人事、日米貿易交渉の最終合意などは、企業収益に直接影響するシグナルです。これらは無視できません。2025年4月の相互関税発表や、日米合意による15%への落着は、まさにシグナルでした。
「発言の内容」ではなく「それが実際の政策として動くか」を見る目を持つことが、トランプ時代の投資家に求められる素養かもしれません。もちろん、どちらか判断が難しい局面もありますが、「まず一晩待つ」だけでも、衝動的な売買は減らせます。
発言に反応するたびに溶けていく、見えないコスト

ここで少し視点を変えてみましょう。「ニュースに反応して動く」こと自体にも、コストがあります。
2025年4月のケースで考える
相互関税ショックで日経平均が急落した際、パニックで持ち株を売った投資家がいたとします。その後、90日猶予の発表で急騰したとき、その人は「戻ってくるのを待つ」か「高くなってから買い直す」しかありません。売買の手数料と、急騰分を取れなかった機会損失。これが「見えないコスト」です。
積立を止めることのコスト
「不安だから今月の積立を止めた」という判断も、長期で見るとコストになります。急落した月に積立を止めるということは、安い価格で買う機会を逃すことを意味します。ドルコスト平均法の恩恵は、まさに「下がった月も淡々と買い続ける」ことで生まれるからです。
情報を追いすぎることの時間コスト
朝起きるたびにトランプのSNSをチェックし、株価アプリを開いて一喜一憂する。この行動が積み重なると、精神的なエネルギーと時間を大量に消費します。その時間を仕事やスキルアップに使った方が、長期的な「稼ぐ力」の向上につながるかもしれません。「相場のチェック回数を減らす」ことも、立派な節約です。
長期投資家としての実践的な身の処し方

では、具体的にどうすればいいのか。一つの答えを押しつけるつもりはありませんが、いくつかの視点をご提案できます。
積立は「感情と切り離す」仕組みにする
毎月の積立を自動設定にしておくと、「今月は不安だから止めよう」という判断が入り込む余地がなくなります。機械的に続けることが、最大の武器になります。トランプが何を言おうと、積立だけは粛々と動き続ける状態を作れると、精神的にもずいぶん楽になります。
ポートフォリオに「揺れに強い資産」を混ぜる
輸出関連株一辺倒だと、トランプの関税発言のたびに大きく揺れます。内需系・ディフェンシブ(生活必需品、医療、公益事業など)を一定割合混ぜることで、ポートフォリオ全体の振れ幅を抑えられます。日本株・米国株・債券・現金のバランスは、自分のリスク許容度に合わせて考えてみてください。
現金比率を「安心料」として持つ
急落が来ても慌てない理由のひとつは、「現金の余裕がある」ことです。生活費6か月分の現金を手元に残しておくだけで、相場の乱高下に対する精神的なゆとりが生まれます。「余裕資金で投資する」という原則を守ることが、感情的な売買を防ぐ最強の処方箋です。
ニュースを見る頻度を意図的に減らす
トランプ発言は毎日のように飛び出しますが、長期投資家が本当に確認すべきタイミングは、年に数回の大きな政策転換があったときだけで十分かもしれません。毎日見なくても、インデックス積立は粛々と動いています。「情報の量を減らす」勇気が、長期投資を続けるための静かな力になります。
まとめ ── 振り回されないために、今日できること
トランプ大統領の発言は、これからも市場を揺らし続けるでしょう。キューバの次は何が来るか、誰にも予測できません。
ただ、振り返ってみると、ショックのたびに「どうしよう」と売買を繰り返した人より、積立を粛々と続けた人の方が、多くの場面でいい結果を残してきました。それはデータが示す事実であり、感情コストを節約した人へのご褒美とも言えます。
「発言に一喜一憂しない」「積立を仕組みで継続する」「現金の余裕を持つ」── この3つを心がけるだけで、トランプ相場の嵐の中でも、自分のペースを守れるのではないでしょうか。
最終的な投資判断は、あなた自身の状況と価値観に基づいて行ってください。この記事が、そのための小さなヒントになれば幸いです。
※本記事のイラストはAI生成のイメージ画像です。特定の企業・ブランドを表すものではありません。投資に関する最終的なご判断と結果は自己責任でお願いいたします。本記事は特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。
